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強迫性障害になりやすい人とは?

[2025.05.20]

強迫性障害(OCD)は、こだわりや不安が強くなりすぎて、日常生活に支障をきたす精神疾患です。

「もしかして自分も?」と感じている方の中には、性格的な傾向や生活環境からそのリスクが高まっている可能性があります。

この記事では、強迫性障害になりやすい人の特徴、背景要因、典型的な症状、セルフチェック方法、治療法までを網羅的に解説します。早期発見・対処のきっかけとして、ぜひお役立てください。

強迫性障害になりやすい人の性格的特徴

真面目、几帳面、完璧主義である

以下のような特徴を持つ人は、強迫性障害に陥りやすい傾向があります:

  • 責任感が強い

  • 完璧主義で曖昧さが許容できない

  • こだわりが強い

  • 神経質

  • 融通が利かない

「間違ってはいけない」「完璧であるべき」といった考えが強いと、不安や不完全感から強迫的な行動に至りやすくなります。

自分のルールや規則に固執しやすい

「こうでなければならない」という強い思い込みを持ちやすく、生活の中に“自分ルール”を多く抱えがちです。これが過度になると、些細な逸脱にも不安を覚え、強迫行動へつながります。

ネガティブな感情を持ちやすい、ストレスを感じやすい

物事を悪い方向に考えやすい人、ストレスへの耐性が低い人は、強迫性障害の不安感に巻き込まれやすくなります。

不安感の強さと過度の防衛反応

「万が一」に備えようとする気持ちが強く、必要以上の確認や洗浄を行ってしまうケースが多く見られます。

強迫性障害を発症しやすい背景

強迫性障害と遺伝の関係について

強迫性障害(OCD)は遺伝的要因と関連があることが、複数の研究で示されています。特に親が強迫性障害または強迫神経症を抱えている場合、子どもがOCDを発症するリスクは約4倍に高まるという報告もあります(Nestadt et al., 2000)。

さらに、一卵性双生児でOCDの一致率が高いことからも、遺伝要因の影響は明らかです。もちろん、遺伝だけでなく、環境的・心理的な要因と組み合わさって発症するケースが多いため、家族歴があるからといって必ず発症するわけではありません。

【参考文献】Nestadt, G. et al. (2000). “A family study of obsessive-compulsive disorder.” Archives of General Psychiatry, 57(4), 358–363.

セロトニン不足と強迫性障害の関連性

強迫性障害は脳内の神経伝達物質「セロトニン」の機能異常と密接に関係しています。セロトニンは不安や気分の安定、衝動の抑制などを司る物質で、前頭前野-線条体-視床ループと呼ばれる脳内の回路で重要な役割を果たします。

この回路の中でセロトニンが十分に働かないと、「心配→確認→一時的な安心→再び心配」の悪循環が止められず、強迫観念や強迫行為が続いてしまうと考えられています。

実際に、セロトニンの再取り込みを抑制するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が治療に有効であることからも、セロトニンの機能異常が強迫性障害の発症に関与していることが分かります。

発達障害やチック障害と強迫性障害の合併

強迫性障害は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害と合併することが少なくありません。

特にASDの人は「こだわりの強さ」や「繰り返しの行動」など、OCDと重なる症状が見られやすく、診断の難しさにつながっています。ADHDでは、不注意や衝動性による不安が強迫行動を誘発することもあります

また、チック障害(トゥレット症候群など)と強迫性障害は併発率が高く、共通の神経生理学的基盤(前頭葉-基底核回路の異常)を持つと考えられています。これらの合併がある場合、症状が複雑化し、治療法の調整が必要となることも多いです。

ストレスや環境の変化

  • 仕事での過労

  • 人間関係のストレス

  • 結婚、妊娠、出産などのライフイベント

  • 生活環境の変化(引っ越し、転職など)

  • 虐待などの心的外傷

日常の変化や強いストレスが引き金となるケースが多く見られます。

養育環境が及ぼす強迫性障害との関係性

過干渉や過度なしつけ、厳しすぎる家庭環境は「間違ってはいけない」という思い込みを助長し、強迫傾向を育てる要因となる可能性があります。

感染症の既往歴(A群β-溶血連鎖球菌感染症など)

強迫性障害は、感染症によって急激に発症することがあるとされています。特に小児に見られる「PANDAS(Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorders Associated with Streptococcal Infections)」という概念があります。

これは、A群β-溶血性連鎖球菌に感染したことをきっかけに、自己免疫反応が脳の基底核を攻撃し、突然のOCDやチック症状が現れるというものです。

急激な性格変化や強迫症状が現れた場合は、精神科と小児科の連携による治療が求められることがあります。

不安な方は、まずは当院にお気軽にご相談ください。

 

 

強迫性障害になりやすい人が注意すべき強迫観念と強迫行為の例

あなたは大丈夫? 代表的な強迫観念

強迫観念は、自分でも不合理だとわかっていながら、頭から離れない思考のことです。以下に代表的なタイプと具体例を挙げます。

・汚染恐怖・不潔恐怖:「汚れている」「細菌に感染するかも」

(例)「ドアノブを触った手が汚れている」「細菌に感染して病気になるかも」という不安から、何度も手を洗ってしまう等。

・加害恐怖:「人を傷つけるのではないか」「何かぶつけてしまったかも

(例)「運転中に人を轢いたのではないか」「刃物を持ったら人を傷つけてしまうかもしれない」という恐怖に苦しむ等。

・不完全恐怖:「きちんとできたか」「不完全な結果になっていないか」

(例)「メールに誤字があるかも」「火を消し忘れたかもしれない」といった確認を何度も繰り返しまう等。

・縁起の悪いことへのとらわれ:「不幸が起こるかも」「不吉な数字」

(例)「4や9といった数字を見たから不幸が起こる」「特定の順番で行動しないと事故に遭うかも」と考える等。

・あってはならないことへの不安:「人を殺してしまうのではないか」

(例)「自分は本当は人を殺したいと思っているのでは?」など、衝撃的な考えにとらわれてしまう等

行動をチェック:代表的な強迫行為

強迫観念を打ち消すために行う行動が「強迫行為」です。以下のような例があります。

・洗浄行為:過度な手洗い、入浴、洗濯

(例)手が赤く腫れるほど何度も手を洗う/服を何度も洗濯し直す

・確認行為:戸締まり、ガス栓、電気のスイッチなどの確認

(例)玄関の鍵を何度も確認する/ガスの元栓を見に戻る/日記やSNSを読み返す

・儀式的行為:決まった手順での行動、物の配置へのこだわり

(例)決まった手順で靴を脱ぐ/同じ順番で物を並べないと気がすまない

・数字へのこだわり:特定の数字を避けたり、数えたりする

(例)「4」のつく番号を避ける/何かを5回タップしないと気が済まない

・確認の要求:周囲の人に念押しや保証を求める

(例)「本当に大丈夫?」と何度も家族や友人に確認してしまう

・回避行動:強迫観念を抱きやすい場所や状況を避ける

(例)不潔に感じる場所(公衆トイレなど)を極端に避ける/特定のニュースを見ないようにする

もしかしたら強迫性障害?セルフチェックしてみましょう

強迫性障害のセルフチェック項目

  • 手が荒れるほど手を洗ってしまう

  • 鍵やガスの元栓を何度も確認してしまう

  • ありえないようなことを繰り返し考えてしまう

  • 日常生活に異常な時間や労力を費やしてしまう

  • 物の配置や順番に強いこだわりがある
  • 頭に浮かぶ考えに悩まされている

  • 繰り返す行動をやめられない

  • こだわりが不快で望ましくない内容である

  • 自分の考えであることを理解している

  • 日常生活に悪影響が出ている

【判定結果の目安】

  • 1〜2個該当:一時的な不安傾向の可能性あり

  • 3〜4個該当:強迫傾向が強まっている可能性。注意が必要です

  • 5個以上該当:強迫性障害の可能性があります。専門医への相談をおすすめします

強迫性障害の治療法

強迫性障害の治療は、「薬物療法」と「精神療法(心理療法)」を併用することが基本です。

  • 薬物療法(SSRI)
     選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、不安を軽減し、強迫観念を抑える効果があります。個人差はありますが、効果が現れるまでには数週間かかることもあります。

  • 認知行動療法(CBT)
     中でも「曝露反応妨害法(ERP)」が有効とされています。あえて不安を引き起こす状況に身を置き、強迫行為を我慢することで、徐々に不安に慣れていく治療法です。

  • 薬と心理療法の併用
     重度の患者や、薬だけでは効果が不十分なケースでは、両方を組み合わせることが推奨されます。

  • 家族・周囲の理解とサポート
     本人の不安に巻き込まれすぎず、かつ否定せずに見守るスタンスが重要です。

強迫性障害になりやすい特徴を知り、早めの相談でより良い生活を

強迫性障害は、誰にでも起こり得るこころの病気です。
「なりやすい人」の特徴やリスク要因を知ることは、早期発見・予防・改善への第一歩となります。

もし少しでも思い当たる節があるなら、無理をせず、心療内科や精神科などの専門機関に相談することをおすすめします。
正しい知識とサポートで、安心できる生活を取り戻していきましょう。

 

 

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