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【DSM-5対応】ADHDの全貌: 精神科医が解説する最新診断基準と治療法

[2025.02.04]

はじめに

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、小児期から発症する神経発達障害です。不注意、多動性、衝動性という3つの主要な症状が特徴的で、日常生活や学業、社会生活に支障をきたします。本日は、ADHDの概要、診断基準、原因、治療法などについて、詳しく解説していきます。

ADHDの概要と症状

ADHDは、脳の機能的な違いから生じる発達障害の一種です。主な症状は以下の3つです。

不注意

不注意は、ADHDの中核症状の1つです。注意を持続させることが困難で、細かい作業ミスが目立ちます。また、指示を最後まで聞けないなど、注意力の欠如が顕著です。

例えば、学校の授業中に教師の話を最後まで集中して聞くことができない、宿題や課題を忘れがちである、机の上がいつも散らかっているなどの症状があります。

多動性

多動性とは、身体を動かし続けたり、じっとしていられない状態を指します。落ち着きがなく、いつも動き回っているように見えます。

例えば、席を離れて歩き回ったり、しゃべりすぎたりする。落ち着いた活動に従事することが難しく、絶えず体を動かしている様子が見られます。

衝動性

衝動性とは、考える前に行動してしまう傾向のことです。状況を判断する能力が乏しく、つい衝動的な行動をしてしまいます。

例えば、質問に答える前に口を挟んでしまったり、順番を守れずに列に割り込んでしまったりします。また、物事を深く考えずに行動するため、危険な行為に走りやすくなります。

ADHDの診断基準

ADHDの診断は、米国精神医学会が策定したDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)の基準に基づいて行われます。主な診断基準は以下の通りです。

DSM-5の診断基準

DSM-5では、不注意や多動性・衝動性の症状が、12歳以前から存在し、2つ以上の場面で機能障害を引き起こしていることが必須条件となっています。さらに、症状の程度に応じて、軽度、中等度、重度の3段階に分類されます。

診断には、症状の客観的な観察や、本人や家族への詳細な問診、知能検査などが行われます。また、他の疾患(自閉スペクトラム症や不安障害など)との鑑別も重要視されています。

成人期のADHD

従来は、ADHDは小児期の疾患とされてきましたが、DSM-5の改訂により、成人期のADHDも明確に定義されました。成人期のADHDでは、多動性は目立たず、不注意や衝動性が中心症状となることが多いです。

成人期のADHDでは、仕事や人間関係でのトラブルが生じやすく、うつ病や不安障害を併発することも少なくありません。発達障害の一種であるADHDの症状が、成人期に顕在化する可能性があることを認識する必要があります。

過剰診断への注意

一方で、DSM-5のADHD診断基準は比較的広範囲となっているため、過剰診断のリスクもあります。症状の変化に応じた適切な診断が重要であり、他の疾患との鑑別を慎重に行う必要があります。

特に、女性のADHDは不注意症状が中心となりやすく、成人期に発見されることも多いため、注意が必要です。スクリーニング尺度の活用や、心理・社会的評価、脳画像検査など、包括的な診断アプローチが求められます。

ADHDの原因

ADHDの正確な原因は不明な点が多いものの、以下のような要因が関係していると考えられています。

遺伝的要因

ADHDには強い遺伝的要因が関与していると言われています。双生児研究などから、ADHDの発症には遺伝が大きく寄与していることが分かっています。

ただし、単一の遺伝子が原因ではなく、複数の遺伝子が関与していると考えられています。今後の遺伝子研究によって、より詳細な原因が解明されることが期待されます。

脳の構造や機能の違い

ADHDの人の脳には、構造や機能の違いがあることが指摘されています。前頭前野の機能調節の偏りや、神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の不足が関与していると考えられています。

脳画像検査の結果からも、前頭前野や線条体などの領域で、活動パターンの違いが確認されています。今後の研究により、脳とADHDの関係がさらに解明されることでしょう。

環境要因

ADHDの発症には、遺伝的要因だけでなく、環境要因も関与していると考えられています。例えば、妊婦の喫煙や飲酒、低体重出産児、児童虐待などが、ADHDのリスク要因とされています。

また、家庭環境や養育態度も影響を及ぼす可能性があります。ストレスの多い環境で育った場合、ADHDのリスクが高まると言われています。

ADHDの治療法

ADHDの治療には、主に薬物療法と心理社会的療法が用いられます。患者の年齢や症状の程度に応じて、適切な治療法が選択されます。

薬物療法

ADHDの薬物療法には、精神刺激薬:コンサータ、非精神刺激薬:ストラテラ・インチュニブがあります。

これらの薬剤は、不注意や多動性・衝動性の症状を改善する効果があります。

主な違い

薬剤 作用機序 効果発現 依存性リスク 適応症状
コンサータ ドーパミン・ノルアドレナリン再取り込み阻害 即効性 あり(低いが注意) 注意欠如、多動性、衝動性
ストラテラ ノルアドレナリン再取り込み阻害 遅効性 なし 注意欠如、多動性、衝動性
インチュニブ アドレナリンα2A受容体作用 遅効性 なし 衝動性、多動性(特に有効)

心理社会的療法

薬物療法に加えて、認知行動療法や家族療法など、心理社会的療法も重要な役割を果たします。これらの療法を通して、ADHDの症状への対処法や、社会適応スキルを身につけていきます。

特に就学前の児童では、行動療法が中心となります。学齢期以降は、家族への心理教育やカウンセリングが並行して行われます。ADHDの人は、適切な支援と工夫により、社会で活躍できる可能性を秘めています。

併存障害への対応

ADHDの人は、しばしば他の精神疾患(うつ病、不安障害、行為障害など)を併発しています。このため、併存障害への対応も重要となります。

うつ症状や不安症状に対しては、抗うつ薬や抗不安薬などが処方される場合があります。また、学習障害や知的障害を伴う場合は、それらへの適切な支援が必要不可欠です。総合的な治療アプローチが肝心です。

まとめ

本記事では、ADHDの概要から診断基準、原因、治療法に至るまで、幅広く解説してきました。ADHDは発達障害の一種ですが、適切な治療とサポートにより、症状はコントロールできます。

ADHDの人は、好きな分野では優れた集中力を発揮したり、独自の視点や発想力を持つことがあります。一人ひとりの個性を尊重し、多様性を受け入れることが大切です。早期の相談と適切な対応により、ADHDの人が社会で活躍できる機会が広がることでしょう。

よくある質問

ADHDの主な症状は何ですか?

ADHDの主な3つの症状は、不注意、多動性、衝動性です。不注意は、作業ミスが目立ったり、指示を最後まで聞くことが困難な状態です。多動性は、落ち着きがなく絶えず体を動かしている様子が見られます。衝動性は、考える前に行動してしまう傾向のことです。

ADHDの診断基準はどのようなものですか?

ADHDの診断は、DSM-5の基準に基づいて行われます。主な条件は、12歳以前から不注意や多動性・衝動性の症状が存在し、2つ以上の場面で機能障害を引き起こしていることです。症状の程度によって、軽度、中等度、重度の3段階に分類されます。

ADHDの原因はどのようなものですか?

ADHDの正確な原因は不明ですが、遺伝的要因、脳の構造や機能の違い、環境要因などが関係していると考えられています。例えば、双生児研究から遺伝的要因の関与が示唆されています。また、前頭前野の機能調節の偏りや神経伝達物質の不足が関係しているとされています。

ADHDの治療法にはどのようなものがありますか?

ADHDの治療には、主に薬物療法と心理社会的療法が用いられます。薬物療法では、精神刺激薬:コンサータ、非精神刺激薬:ストラテラ・インチュニブがあります。心理社会的療法では、認知行動療法や家族療法などを通して、症状への対処法や社会適応スキルを身につけていきます。

 

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